综合日语教程第六册第五课京回顾写真展.pdfVIP

第五課 東京回顧写真展 としん はんたいほうこう む でんしゃ の れいぼう き しゃない じょうきゃく はいま、都心とは反対方向に向かう電車に乗っている。冷房の効いた車内に、乗 客 はまばら[1] である。 つ ゆ あ おも れんじつ さんじゅうご ど ちか きおん あ もうしょ はじ 梅雨が明けたと思ったら、連日[2] 三 十 五度近くまで気温が上がる猛暑[3] が始まっ しらちゃ にご いろ み きょう とうきょう そら くも た。白茶けた[4] ような濁った[5] 色を見せて[6] いるものの[7] 、今日も東京の空には雲 ひ ざ つよ まど そと なが けしき ふしぜん あざ つよ ひとつない。日差しは強く、そのせいか、窓の外を流れる景色は不自然に鮮やかで、強 ら い と あ ぶたい かきわり み すぎるライトを浴びた舞台の書割[8] のように見える[9] 。 あ い じんぶつ な ぜ わたし これから会いに行こうとしている人物が、何故、これほど私 をとらえてやまない[10] の わ あ なんど じもん なに はな なに き か、分からない。会ってどうする、と何度も自問[11] してみた。何を話すのか、何を聞い なに い てもらいたいのか。何を言ってもらいたいのか。 こた はな なに き い 答えはでなかった。話したいことは何もなかった。聞かせたいことも、言ってもらい なにひと わたし ひと あ おも たいことも何一つなかった。私 はただ、その人に会いたいと思っているだけだった。 こうがい ちい えき つ いくにん じょうきゃく お い ひら とびら 郊外の小さな駅に着き、幾人[12] かの乗 客 が降りて行った。開いた扉 [13] の向う せんろ そ さ みだ おびただ かず ひまわり はな み ぷ ら っ と ほ に、線路[14] に沿って咲き乱れる 夥 しい[15] 数の向日葵[16] の花が見えた。プラットホ む さ い しょろう ふじん ひまわり む いきお しろ ーム[17] を去って行く初老[18] の婦人が、向日葵に向かって勢 いよく白いパラソル ひら [19] をを開いた。 つぎ えき に こうけい く かえ つぎ えき つぎ 次の駅でも似たような光景が繰り返された。その次の駅でも。またさらにその次の えき 駅でも。 あら の じょうきゃく すく きゃく お い き だが、新たに乗ってくる乗 客 は少なくなっていた。客 は降りて行くだけで、気が しゃりょう わたし ふく すうにん のこ つくと車両[20] には、私 を含め数人[21] しか残っていない。 でんしゃ なつ ひか なか はし つづ ……それでも電車は夏の光りの中を走り続けている。 いっ か げつ まえ もくようび 一ヶ月ほど前の木曜日のことである。 つと さき がっこう そうりつきねんび やす あめ ひ ご ご わたし